近年、樹木・宿根草・草花について、世界中の素材が国内で流通するようになりました。
グローバル化、インターネット、そして15年ほど前からのガーデニングブームで専門家が世界中から植物を集め、交配して新しい品種をつくり出し、今の百花繚乱状態がつくり出されていったのです。
実のところ、国産においても九州・沖縄地方の南方植物がいつの間にか普通に個人の庭に定着するようになりましたし、他の地方産においても同様のことがいえます。
一昔前は庭づくりというと、ほぼ決まった地元産の植木が使われることがほとんどでしたが、今ではいわゆる仕立物・植木(マキ・マツなど)は見向きもされず(むしろ中国を始めとした諸外国に輸出されている)雑木の株立ち仕立て、カラーリーフ、花木に人気が集中しています。
これは、温暖化による気候変動で南方の植物が冬、枯れなくなったこと、建築スタイルの変化が庭スタイルの変化へとつながったことなどが主な理由だと思います。(しかし、このことが庭の地域性を失くしつつあることは残念なことです)
私達も当初は次から次に増えていく新しい植物たちに戸惑いながらも、手探りしながらスタイルがよく、機能的と思われるものをどんどん庭に取り入れていきました。
そして今では、経験則と植物の知識により、安定的に使えるものと使えないものの区別がつくようになってきました。
同じ植物でも品種の違いにより性質が違うものです。
私が一番気にするのは、気候風土・土性・環境条件との相性です。ほっといてもずっと健康でいてくれるものが一番望ましいと思っています。
健康で、健康を維持できること。当然、植え方・植え場所・他の植物との相性も重要なので、確かな知識と経験が必要になってきます。
それにしても、昔はなかなか手に入らなかった植物でも、今は結構簡単に手に入ります。売れるとなれば、何処から現れたのか大量に市場に出現して、いきなり消えていくのは閉口しますが、かつてと比べると隔世の感があります。
例えば普通、地域の生産者・材料屋さんは、いくら広大な畑があったとしても、地域性の異なる植物、又は個人個人が好きでない植物は在庫できないし、しないものです。ですから、下手なものを頼むと怒られてしまい、どっちがお客かわからなくなったものですが、今はネットワークがしっかりしているので、無理がありません。当然、私達も分野の異なる仕入先をいくつかもっているので、たいがいのものは揃えることが出来ます。
なんという、いい時代になったものでしょうか
それが故、レア・希少価値というものが難しくなってきています。
えっ、そんなものが…というものが普通にホームセンターで結構安価でさばかれています。
まさにさばかれています。
そこで、いま私が思うことは…
まず、庭つくりですから旬でない、市場に出ていない時期の植物も揃えることができるネットワーク、又は自分たちのストックがあること。
そして何より、より良い個体を選びとる目があること、これが重要です。
例えありふれた普通の種類でも、しっかりした一品物はなかなか探せないし、選びとれないものです。むしろ普通の種類で優れたものこそ価値があります。
例えば、偏に日本人といっても渋谷のスクランブルで流れる人々と日本ハムファイターズの大谷君とでは、ものが違うということになります。(これは誰でもわかりますね・・、どっちがいいかは別としてですが)
庭つくりでは単純に雄々しくて立派な木というだけでなく、例えばねじ曲がっていても、唯一無二のその場所にあった、唯一無二の素材を選びぬいてくることが重要になってくるのです。
このためには、確かな知識と経験・構想力、そして少しの運が必要になってくると考えています。
実はこれらのことは、外構・庭づくり全般に通じていることですが、プロとアマの垣根が低くなり、情報・物が溢れかえる今だからこそプロとしてのプライドと日々の精進が何より大事と常に痛感する日々なのです。