アプローチ・園路

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■高低差がなく歩きやすい

門周りから玄関、或いは庭や駐車場、いずれも高さの違いがあるのが普通です。

階段やスロープを効果的に使い、対処します。
階段(蹴上がり15~18cm、踏面30~40cm)で園路全体のフラットな距離を長くします。


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意外と見落としがちなのが5cm内外の段差です。
意識しにくいので、余計につまづくケースがあります。距離にもよりますが、園路全体で吸収して全体に8%くらいまでの勾配をつけるか、スロープ・階段の場所まで高さを移動するのがいいでしょう。

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■滑りにくく安全である

園路・アプローチの表面の仕上げ方、素材に配慮します。

自然石やタイルを使用する場合は、表面がざらざらしているすべりにくい素材を選ぶことが重要です。
セメント系の仕上げであればハケ目を入れるとか砂利の洗い出し仕上げがいいでしょう。
ところどころにつま先が引っかからない程度に自然石を散らすのも滑り止めとデザインの観点からおすすめです。

安全性は、前述の階段・スロープにおいて特に気をつけたいものです。


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ケースによっては、手摺をつけたり、夜間足元が見えるようにライトアップすることも考慮に入れるべきでしょう。

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■歩行に安全な有効幅員

歩く場所によって違いがありますが、大体90cmくらいは欲しいものです。例えば門から玄関まで人一人が歩けると同時に荷物を持って歩いた場合でもストレスを感じない幅も必要でしょう。

又、曲がる場所は少し広めにとることが必要でしょうし、植栽やベンチなど構造物とのバランスもよく配慮が必要です。

最近の庭リフォームにおいては、将来のために車椅子が通れる幅を希望されることも少なくありません。
予想される将来と、現在のライフスタイルを十分考慮することが重要でしょう。

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最近の庭リフォームにおいては、将来のために車椅子が通れる幅を希望されることも少なくありません。
予想される将来と、現在のライフスタイルを十分考慮することが重要でしょう。

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■メンテナンスが楽・草止め効果“靴が汚れない”

土の部分が広く、草の管理に苦労されている例や、雨が降るたびに水がたまったりぬかるんだりして歩けない例、或いは庭に出ただけで靴がどろどろになって玄関を汚してしまう例などがあります。
いずれのケースもしっかりしたアプローチ・園路をつくることで解消できます。

庭園路にしろ玄関アプローチにしろ、人の動線を意識した位置取り、広すぎず狭すぎないバランスのよい大きさが求められます。

その際、石を貼る・コンクリートで仕上る、いずれにせよしっかり水勾配をつけ、地面より少し高めに仕上げ、境目には砂利やグランドカバーなどで土の流入を防ぎます。

 

デザイン

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■大きな要素で考える

庭・外構を設計するうえで何もない更地を、どのように人が生活する生活空間へと変えていくのか、アプローチ・園路によるエリアわけが非常に重要になります。
門周り・駐車場・玄関・庭・植栽スペース・レクリエーションスペース、それらの関連付けとエリア分けがうまくいけば、その後の作業はわりあい簡単なものです。

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次に調和を考えます。
まずは建物・周囲の住環境とのバランスに配慮しなければなりません。
自然を強く意識した木造の家と、現代美術風のむき出しコンクリートを多用した家では、おのずとアプローチ・園路の素材、技法も変わってきます。
また、周囲にある程度の落ち着いた緑の見られる住環境と街中のと快適な住環境では、全く違うものになるでしょう。

いずれの場合もシンプルで使いやすい機能美追求がいいでしょう。そして少なくとも植栽を意識したいものです。

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■小さな要素で考える
素材による質感・色彩・色や形の組み合わせ・全体の模様などの要素があります。これらはそれぞれ用途と好みとバランスで考えていきます。
ここで見落としがちなのがグレードです。使用素材によって明らかに差がでます。
例えば同じレンガでも、ものによってはどう使ってもレベルの高い雰囲気が出せないものです。
逆にいいものを使えば、どう使ってもそれなりの結果を出してくれるものなのです。
素材の選択は非常に重量です。経験とセンスのある専門家の意見を上手に取り入れ、バランスと好みを考慮にいれながら慎重に選択したいものです。

次に変化です。
単調な道はつまらないものです。出来るだけ心と体の遊びをうまく取り入れたデザインでありたいものです。

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素材や色の変化で目を遊ばせたり、何かの形を意識したり、途中で広いサークル園路などを取り入れることで足を休められるスペースを作ったり、などの方法があります。
それらを全体の形状の変化と組み合わせ(曲線と直線)奥行きのある明るく楽しい場所にしたいものです。

デザインにおいて最後に付け加えたい重要なことは植裁と自然観です。

空いたスペースに植物を植えるのではなく、常に植物のあり方を意識した園路であるべきなのです。昔ながらの造園的な考え方では、園路全体を川と見立てたり、地形や方角から水の沸く場所、山があり谷があり細い流れからやがて海へという当然あるべき自然の姿を常に意識しています。木がある場所も花が咲く場所も川が流れる場所も、おのずと決まってきます。あるべき普通の自然の姿が人にとって最も気持ちのいいものなのでしょう。

現代の住宅事情を考えるとそういう点と矛盾していたり、全くナンセンスなケースも多々見受けられます。
しかし、大きな意思を常に意識し、出来るだけ多くの要素を全体のバランスが崩れない程度に盛り込んでいく。現代人の心地良さは現代的な手法によって叶えられるものでもあります。
いいデザインとはそんなものではないでしょうか?

素材・技法

■自然石 乱張り

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硬質砂岩や安山石などの乱形石材を組み合わせた園路です。違う色味の石を組み合わせたり、奥行きを出して植栽との調和に重点を置いたり、竹垣で絞った入口から落ち着いた和庭の雰囲気を演出したりしています。
バラの花を模して石を組み合わせた例もあります。

■自然石 方形石
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写真には56cm角の比較的大きな石が使われています。規則的に張ってもランダムでもよし、現代的な幾何学模様の似合う素材です。
植栽も葉の姿や樹形がシャープな植物が合うようです。市松模様で砂利やグランドカバーと組み合わせても面白いでしょう。

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■自然石 敷石

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御影石や大谷石の園路です。
大判の石では厚みもあるので重量感があります。
他の素材や工法(写真は乱石と砂利洗い出し)と組み合わせて変化を持たせたり、場所によって石の表面仕上げ(磨き・バーナー・ビシャンなど)を変えたりします。

■自然石 飛石 あられこぼし

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1339462095.21自然石を人が歩きやすいように置いていったものを飛び石といいます。
石の形の組み合わせや配置、ピッチによりリズム観と機能性を持たせます。
もともと着物を着た人を対象にした工法であるため、靴を履く現代人にはやや不向きかもしれません。

1339465537.24あられこぼし風石張りは、飛石と乱張りの中間にある工法といえ、機能というよりは雰囲気とその場所の意味合いを重視します。
飛石・あられこぼし、ともに現代では意匠的な意味合いが強いので、作者の遊びとセンスがより必要になるといえるでしょう。

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■レンガ タイル
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工業製品であるレンガ・タイルともにインテリアとエクステリアの中間に位置する素材といえます。
それだけにより建築を意識した使い方をする必要があります。建築物によってレンガ・タイルを使うべき場合と使わない方がいい場合があると思います。
庭で使う場合、重要なのは、数あるレンガ・タイル素材のなかでどんな素材を選ぶのか、この一点に尽きると思います。

■舗装  モルタル系  砂利洗い出し

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非常にベーシックで尚且つ、いろいろな応用と工夫がきく工法です。
しかも変形地においてもほぼ問題なく施工ができます。
モルタルのきめの細かいセメント色は、いろいろな資材のあふれる昨今だからこそ際立つシンプルさと機能性を併せ持ちます。
洗い出しに関しては、使う砂利の種類・量・セメント色・他の骨材などにより多くのデザインパターンが考えられます。さらに前後者ともに他の多くの素材と合わせることが可能です。主張しすぎず、他の素材とも調和しやすいので庭における名脇役として玄人好みの工法といえます。